2018/08/06

中編:かつてそこにあったもの(3)/(3)


 店内へ通じるガラスの自動ドアが開いた瞬間、人々の声、雑踏、放送が塊になって押し寄せてきた。エスカレーターに乗り、地下駐車場出入り口から店舗のある階まで上がる。

 書店で文庫本を一冊買って、チェーン店のカフェに入った。混雑していたが、隅の席が空いていて、僕はそこでコーヒーを飲んだ。複数の中年の女性、家族連れ、中高生くらいの女の子、ノートパソコンを開いている男性、本とノートを開いて何かの勉強をしている若者が目に映る。

 買った文庫本をビニール袋から取り出して読みはじめた。周囲はうるさかったが、それは意味をなさないノイズで、ほとんど言葉としては聞き取れなかった。その環境には静寂に近いものを感じた。

 文字を追うことに疲れると、僕は本を閉じてカフェを出た。雑踏の中を歩いて食料品売り場に向かい、プラスチックのカゴを手に持って、食料を入れていった。牛乳を買い、パンを買い、生肉を買い、缶コーヒーとチョコレートを買った。セルフレジで精算して、袋に中身を詰めていく。

店を出て、車に入り、助手席にビニール袋を置いた。ドアを閉めると、その途端に、周囲の音量が一段小さくくぐもった。キーを回してエンジンをかけ、僕は家に向かって車を走らせた。道は渋滞気味だった。空はまだ全体を均一な黒雲に覆われていて、雨の止む気配はなかった。

赤信号になったとき、僕は買い物袋から缶コーヒーを一本取り出して、一口だけ飲み、ホルダーに置いた。
 
ふと、歩道に目を向けると、頭にタオルを載せて、屋根付きのバス停のベンチで休んでいる、高校生の女の子がいた。傍らには濡れたビニール傘が置いてある。髪は鎖骨に届くくらいのまっすぐな黒髪で、ブラウスの上に紺色のジャージを羽織っていた。その姿に僕は既視感を覚えた。
 
彼女の表情を見ようとしたが、雨に霞んでよく見えなかった。そのうち、信号が青に変わっていることに気が付いた僕は、あわててアクセルを踏み、前へ進んだ。家に近づくにつれ、雨は次第に激しくなってきていた。脳裏に先ほどの女の子の姿を思い浮かべた。それはさきほどの光景の記憶なのか、僕自身の過去の思い出の中にいる「彼女」の姿だったのかが曖昧だった。
 
家につくと、僕はソファに座り、飲みかけのコーヒーを飲みほした。部屋の中は薄暗かったが、電気はつけなかった。雨の音が聞こえる。自然と息が漏れた。溜息だったのか、リラックスの息だったのかは、自分でもわからない。

なぜか、自分が確かに年を取っていることを感じた。ついこの間だと思っていた高校時代なんて、もう十年近くも前のことになっていた。何かを得る方向にではなく、すでに失う方向へと進んでいることを、僕ははっきりと認識した。

 ☆ ☆ ☆

その数日後の夕方、吉田さんとの約束があった。

 僕たちは前と同じく駅前で待ち合わせをした。予定通りの時間に僕たちは落ち合った。昼間よりも気温が落ちて、涼しい宵の初めだった。吉田さんは僕を見つけると手を振って歩み寄ってきた。吉田さんは胸元にレース飾りがついた、ベージュの服を着ていた。グレーのスカートに黒いレギンスを合わせ、サンダルをはいていた。

 僕たちは並んで目的のお店に向かって歩き出した。濃紺の空の西の端に赤い雲が幾つか浮かんでいる。立ち並ぶ駅前のビルの照明や電飾された看板が明かりを灯し始めていた。学習塾の建物に、自転車に乗った子供たちが何人も集ってきている。

「他の知り合いには会ったの?」歩きながら僕は聞いた。道にはいくつもの黒い人影が見え、話し声も聞こえる。

「うん」と彼女は言った。

「もう二度と会えないかもしれないからね。でも特に寂しさとかそういうのは沸き起こってこなかったな。連絡取ろうと思えば、携帯もネットもあるしね。まあ、そうはいっても、なかなかしないんだけれど」

 そうだね、と僕も相槌を打った。僕も人付き合いが好きではないけれど、中学生のときから蓄積されてきた友人の連絡先は百を超える。しかし現実での関係が途絶えてからは、そのほとんどすべてと連絡することは無かった。ついこの間まで吉田さんもその一人だった。

 ☆ ☆ ☆

 目的の店に入り、席に着いた。僕たちが入ったのは個人経営の小さな料理店で、周りにはあまり客がいなくて静かだった。

「いつ出発するの?」

明後日、と彼女は言った。

「どうして引っ越すの?」

「結婚するの」

「ほんとに?」

「冗談。仕事を見つけたの」

 そう言って彼女は笑った。

「あなたはずっとこの街に住み続けるの?」

「どうだろう」

「結構執着してるでしょ、この街に。なんだかんだ言って」

「そんなことないよ」

 僕はそう答えた。注文した料理のソーセージに、フォークを刺した。プツリと皮を破って肉汁がしみ出す。僕はそれに噛みついた。

 どうだか、と言って吉田さんはビールを飲んだ。僕はバスケットからパンを一つ取った。店内には、BGMもかかっていなかった。離れたテーブルからの話し声や、店員同士の会話の声、作業や調理の音が、どこかからさざめきのように聞こえてくるだけだ。

 僕たちはとぎれとぎれの話をしながら、料理とデザートのチョコレートアイスを食べて、それから、長居することもなく、店を出た。

 帰り道、吉田さんは薄いカーディガンをバッグから取り出して羽織った。人通りも車も少ない。すぐ近くに中学校があり、フェンス越しに見えるグラウンドは暗闇を溜めこんでいるように佇んでいた。道路を隔てた反対側には猫が一匹ゆっくりと歩いていた。目が緑色に光っている。僕と吉田さんは無言で民家の垣根の向こうへ消えてしまうまで猫を目で追っていた。

 このあたりの道は、高校時代のときの通学路だった。一瞬、当時の感覚がよみがえる。朝の眠気、冬の肌を切る様な寒さ、漂ってくる草花の匂い、一日が終わった後の徒労感と安堵感……。

「たいへんねえ」

 独り言のように、吉田さんが言った。

「なにが?」

「何かに縛られてそうで」

 彼女の言葉は空気に溶けるようにして消えていった。僕は俯いた。黒々としたアスファルトの上に踏みつぶされた煙草が捨てられていた。

気にしないでと言って彼女は歩き続けた。そして鼻歌を歌い始めた。聞き覚えのある歌だった。しばらく考えて、曲名を思い出した。ディズニーの、It’s a small worldだった。

 タクシーが通る道まで来ると、僕たちは夜道に立ち止ってタクシーを待った。数分でタクシーが通りかかった。吉田さんが手を上げてタクシーを止める。

「乗っていかないの?」

 乗り込みながら、彼女は僕にそう聞いた。

「いや」

 僕は首を振った。

「方向、一緒でしょ」

 吉田さんは僕の目をじっと見る。彼女は一度も瞬きをしなかった。目が合って、深く黒い瞳に引き込まれそうになった。僕は目を逸らした。

「歩くのが好きなんだ」

「そう?」

「うん」

「ほんとに?」

 僕はがさつに頷いた。吉田さんは座席に座り直し、バッグを膝の上に置いた。そして笑みを浮かべる。

「じゃあ、気を付けて。今日はありがとう」

 ドアの閉まる気配がする。僕は急いで口を開いた。

「もしよかったら、出発するとき、見送りにいってもいい?」

彼女は首を一度縦に振って、バイバイ、と言った。ドアが閉まる。タクシーが走り出して、テールランプの光が遠ざかっていき、闇の中へと消え入った。僕はそれを見届けると、一人で家へ向かって歩き出した。

☆ ☆ ☆

 彼女が街を去る日、浅い眠りのあと、日が登る前の時刻に僕は起きだして、シャワーを浴び、髪を整えた。ジーンズをはいて、ポロシャツを着た。家の中は静かで、秋の虫と、朝のヒグラシの声が聞こえた。シリアルに牛乳を入れて、簡単に朝食を済ませた。

 外に出て、家の鍵を閉める。待ち合わせ場所に向かって、薄暗い道を歩き出した。

 海岸の前で僕と吉田さんは落ち合った。陽が登り切っていないため、空は夕暮れのように赤かった。幾つかの白い大きな雲が浮いている。半そでから延びる腕は少し肌寒かった。疎らに、小さく蝉が鳴いている。夏の終わりを僕は感じた。

 僕が近づくと、車の中から吉田さんが出てきた。時を進めるように規則正しく波の音が聞こえる。ジーンズに白いTシャツというシンプルな格好だった。

「久しぶりに会えて嬉しかった。元気でね」と彼女は言った。風が吹いて、顔にかかった髪を直した。

 僕は頷き、「運転、気を付けて」と言った。彼女の車の中には、後部座席に段ボール箱が二つ、助手席にハンドバッグがあるだけで、他に物はほとんどなかった。

 ほんの少しの間、時間にして五分もないほどの間、僕と彼女は会話を交わした。


「じゃあ、行くわ」

「うん」

 また縁が会ったら会いましょう、と彼女は手を差し出してきた。僕はその手を握る。細くて冷たい手だった。

 手を離すと彼女は車のドアを開けて運転席に座る。エンジンをかけ、車が震え、動き出した。最後に、彼女は窓越しに手を振った。僕は遠ざかっていく車の背に手を上げて見送った。テールランプが視界から消える前に、僕は振り返って家へ向かって歩き出した。思っていたほど、感傷的な気分にはならなかった。歩いている間に街は目覚めだし、車と人の通りが多くなり、街の騒音も大きくなった。

 その道の途中、僕は橋に差し掛かった。そして、かつての時間が、脳裏に、強烈な濃密さで、蘇ってきた。


 ☆ ☆ ☆

「大きい雲」

 と、彼女は積乱雲を見ていった。ちょうど橋の真中あたりだった。僕たちは立ち止って、熱を持った金属製の手すりに手をかけてそれを見た。その雲は夕日を受けてその赤と金色に染まっていた。低いところに浮かび、もこもこと肉感すら感じるほどに分厚かった。腕を動かすと、汗が手すりに付着していた。

 下を流れる川は部分部分で、オレンジ色の陽光を反射させていた。夏草が音を立てて揺れ、複数の蝉の大きな鳴き声が空間の全てを満たしていた。川風の生臭い匂いがした。

「なんか夏っぽくていいね」

「飽きた」と僕は言った。

「私に?」と彼女は冗談めかして言った。

「景色にだよ」

「そう? 綺麗なのに」

 僕たちは再び歩きだした。彼女はブラウスの袖を二折りほど捲っていた。

 橋を渡り終えた。大型トラックが大きな音を立てながら車道を走っていく。自動再生のように脳裏に浮かんでいた情景はそれで消えた。家までの道を僕はゆっくりと歩いていった。「彼女」と、僕の過去を、思い出しながら。

 ☆ ☆ ☆

 雨が降っていた。その梅雨の雨は、乱れることなく、秩序正しく静かに長く続いた。傘の縁から水滴が断続的に落ちる。ズボンの裾が濡れて不快だった。金属音が響いている。それが耳鳴りであることに気がつくまでしばらくかかった。僕はその音がひどく不思議だった。少なくとも聞こえているのは僕のみ。音が空間中を伝わる縦波なら、この耳鳴りの音は音と呼べるのだろうか。物理的な音でないとしたら、この聞こえている金属音に似た音はなんだ? 測定できない音。測定できないものがはたして存在するのか? しかし現に僕はこの音を聴いている。この音には存在感のみが強烈で、現実感がまるでない。

 机の上に飾られた花を見た。

 そんなもの、そのときまで、テレビのニュースでしか見たことは無かった。誰が用意したものなのか、まずそれが気になった。誰が、彼女のために花を、どこから買って来たのか。最初の休み時間のときに、歩いていた女子が机の脚を蹴ってしまい、花瓶が倒れた。彼女はその後激しく泣いた。教師に、保健室に連れられていき、そして結局、その日は戻ってこなかった。僕は花瓶に花を戻し、廊下の水道で水を入れた。おしゃべりの声が響いていた廊下だが、僕が花瓶を持って現れると急に静かになった。僕はそれを再び彼女の机に乗せた。

☆ ☆ ☆

 頭痛と耳鳴りがした。

 僕はバス停の、人のいないベンチに座り、その耳鳴りを静まるのを待った。目を閉じて、精神を鎮めようとした。

 死んだ短い黒髪の彼女の顔が浮かぶ。美しい、と少なくとも僕は思っていた。利発な目をしていて、可愛い小物が好きだった。四肢の骨の存在感が常人よりも強いほどに体は細かったが、運動神経はよく、バスケットボール部の練習着を、女の子らしく、少しルーズに着こなしていた。

「もう夏だね」と、僕たちが高校二年生にだった年の五月の終わりごろ、彼女は言った。半袖のブラウスの袖を、半分ほど捲っていた。裾はスカートの外に出したままだった。

「まだ五月だぜ」

「私が昔いたところじゃ、五月だともう夏って感じだったよ」

「確かに今日は暑いなあ」

 バス停のベンチから見える空は青く、白い雲が浮かんでいた。彼女はバッグからタオルを取り出して顔を拭いて、首から下げた。ベンチの裏には灌木が青々と茂っていた。

 僕は時刻表を確認した。次のバスまで、あと十五分。

「荷物持ってて」

 横長の手持ちバッグを放り投げるようにして彼女に渡すと、僕は道路を突っ切ってバス停の向かいにある自動販売機に向かった。ポケットから小銭を取り出して、カフェオレを二つ買った。道路を隔てて観る彼女は、元々が小柄だったが、さらに小さく見えた。

 三百五十ミリリットルのペットボトルを一本彼女に渡し、僕はバッグを渡され、ベンチに腰かけた。彼女は軽くペットボトルを振りながら礼を言った。

「ありがとう」

 ん、と僕は返事を返して、ふたを捻って、カフェオレを口にした。冷たさのせいか、味が薄く感じられた。容器の表面には水滴がどんどんと浮かんで流れていく。日差しに焼けていくアスファルトを、僕たちは黙って眺めて、バスを待っていた。

 独特の重くリズミカルな排気音を響かせながら到着したバスに、僕たちはそろって乗り込んだ。車内には冷房がついていた。涼しい、と彼女は言った。少し寒いくらいだったが、空調の音とともに吐きだされる冷風には確かな夏の匂いがした。乗客は疎らだった。僕たちは車内の真中あたりにある二人掛けの席に座った。僕はバッグを床に置き、彼女は膝の上に置いた。スカートのポケットから、キャラクターものの携帯ストラップが出ている。単語帳を取り出して、ペラペラと捲り始めた。

 初夏の西日に包まれた街をバスはゆっくりと、断続的に停車しながら周っていく。彼女は単語帳に目を落としたままだ。黒い髪が、まっすぐに垂れている。いくつもの広告が車内に貼られていた。窓から見える遠くの景色はアスファルトから立ち上る陽炎に霞んでいた。僕はずっと窓の外を見て過ごし、彼女は単語帳を捲って過ごしていた。

 バスを降りると、ずいぶん陽は落ちていた。夕間暮れの中を二人で歩く。道に沿って、フェンスに囲まれた林がある。その木々の中は引き込まれるくらいに暗かった。フェンスの向こうは一つの巨大な影だった。その影の中からヒグラシが短く鳴いた。あの狂気を催すような声が、何かの前触れのように鳴いた。

 隣を歩く彼女は夕日を背に受けて、表情は影に隠されて見えなかった。

 ☆ ☆ ☆

 家についた僕は、今はもう使っていない過去の携帯電話を電源に接続して、数年ぶりに起動した。

 あの頃、ほぼ毎日、僕たちはメールをしていた。終わりの来ない文章を、僕たちは交換し続けた。メールの文はいつも短い受け答えで、その単文を交わすおしゃべりは永遠に続くように思えた。夜にふと携帯を開き、メール着信を告げる封筒のマークが浮かんでいれば、いつも子供じみた暖かい気持ちになった。

 保存された大量のメールの中から、適当な一つを開く。

 差出人:鹿島 美紀
 件名:Re    
 本文:ごめんね、寝ちゃってた。返信待ってた?

 八年前の、分厚い、もう電話としての機能は使えない、ただのガラクタを、僕は閉じた。ディスプレイの明かりが消える。僕は目を瞑って眠ろうとした。

 夢なのか思考なのかわからない曖昧な意識状態を潜り抜けた先は、夜の最も深い時間だった。外部の音は全くしなかった。しかし小さな、寒気を催すような耳鳴りがした。冷風に吹かれたように、腕が粟立ったのがわかった。光のない夜の深さに朝の来る予感がした。僕は枕元に置いたままだった、あらゆる時の更新から取り残されたガラクタを取り、文字を打ち込んだ。

 宛名:鹿島 美紀
 件名:
 本文:君からの返事が来ないことは、わからないことだらけの僕にとっても、完全に理解していることだよ。だから、気にしなくていい。まだ夏の終わりなのに、なんだか今日はとても冷える。目の前の空間がどれほどに広がっているのか、全くわからないほどに暗い。
 過去のある瞬間が、曖昧なまま脳裏に過ることが、最近多いんだ。
 あったようでなかった過去の願望、幻想、自動販売機の光や月の光、夜風の涼やかさ、木々の揺れる音、水のように薄いカフェオレの甘さ。
 もう何の音も聞きたくはないし、誰の声も聞きたくないと思う。話もしたくない。疲れるだけだ。
 ……人が嫌いなだけでしょう、と君は言うかもしれない。それは全くその通りだ。
 僕はもう、以前ほど若いわけじゃない。 そんなことは自分が一番よく知ってる。疲れたんだ。もうしゃべりたくない。
 もし老いることに楽しみを見出し、死を人生の完成としてとらえることが出来れば、人生は幸福だろう。けれど、若さや生や自我に固執するのなら、それは地獄だ。それは知ってた? 
 支離滅裂?
 何を言っているのかわからない?
 僕の頭がおかしいって? 
 それは違うよ。僕がおかしいんじゃない。すべては時間のせいだ。呼吸一つ一つ、心臓の鼓動一つ一つ、脳が発し、神経を伝わるパルス信号一つ一つ、僕の体が刻む時間のせいだ。掴もうとしても掴めず、ただ僕の前を通り過ぎて行く時間のせいだ。

 取りとめのない言葉を綴っているうちに、肩が凝った。携帯の画面に浮かぶ、まともに意味をなさない文字の列を眺め、少しのためらいのあと、すべてを削除し、僕は首を回し、軽く肩を揉んだ。

 カーテンの色が淡く微かな明るみを帯びてきたような気がする。僕はタオルケットを首元までひっぱり上げて、目を閉じた。液晶画面を眺めていた視界の中央に緑色と赤が斑になった残像が映った。流れる砂粒のようにそれらはゆっくりと形を崩していき、徐々に薄くなり、そして消えた。

3 件のコメント:

  1. 初めまして。
    心象を美しく言葉にしてくれる久遠さんの文章が私はとても好きです。
    夏に加えお盆があるこの時期に見たことで更にこのお話が心に沁みたように感じました。
    二度目を読むとまた新しく感じる部分があると思うのでもう一度読んでみようと思います。
    新刊発売の予定があるかは分かりませんが楽しみにしています。
    最後に、これからも微力ながら応援しております。

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    1.  はじめまして。
       とてもわかりにくい作品だったと思いますが、読んでもらえてとても嬉しく思います。
       今、次の作品の出版の予定はまだ決まっていないのですが、期待してくださっている方の期待以上に楽しんでもらえる小説を、出来れば本という形で出したいと思っているので、いろいろと頑張っています。
       応援して頂いて、ありがとうございます。とても大きな力を受け取りました。

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    2. お返事を頂けてとても嬉しいです、ありがとうございます。
      久遠さんのサイトをまったり巡りながら新刊の出版を楽しみに待っています。

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