店内へ通じるガラスの自動ドアが開いた瞬間、人々の声、雑踏、放送が塊になって押し寄せてきた。エスカレーターに乗り、地下駐車場出入り口から店舗のある階まで上がる。
書店で文庫本を一冊買って、チェーン店のカフェに入った。混雑していたが、隅の席が空いていて、僕はそこでコーヒーを飲んだ。複数の中年の女性、家族連れ、中高生くらいの女の子、ノートパソコンを開いている男性、本とノートを開いて何かの勉強をしている若者が目に映る。
買った文庫本をビニール袋から取り出して読みはじめた。周囲はうるさかったが、それは意味をなさないノイズで、ほとんど言葉としては聞き取れなかった。その環境には静寂に近いものを感じた。
買った文庫本をビニール袋から取り出して読みはじめた。周囲はうるさかったが、それは意味をなさないノイズで、ほとんど言葉としては聞き取れなかった。その環境には静寂に近いものを感じた。
文字を追うことに疲れると、僕は本を閉じてカフェを出た。雑踏の中を歩いて食料品売り場に向かい、プラスチックのカゴを手に持って、食料を入れていった。牛乳を買い、パンを買い、生肉を買い、缶コーヒーとチョコレートを買った。セルフレジで精算して、袋に中身を詰めていく。
店を出て、車に入り、助手席にビニール袋を置いた。ドアを閉めると、その途端に、周囲の音量が一段小さくくぐもった。キーを回してエンジンをかけ、僕は家に向かって車を走らせた。道は渋滞気味だった。空はまだ全体を均一な黒雲に覆われていて、雨の止む気配はなかった。