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その朝は、一つ気がかりな夢を見たこと以外は、何の変哲もない薄曇りの日の朝だった。
目を覚ましたとき、時間感覚を喪失していた。灰色の遮光カーテンの向こうに漂っている光の気配は、普段の朝のものよりもずいぶんと弱く、日が昇り切っていない早朝に目覚めてしまったのか、それとも曇りの日でそうなっているのか、判断できなかった。眠気でまだ頭がはっきりと働ない僕は、ただ薄目を開けて、その弱い光を湛えているカーテンを、しばらく眺めていた。
ぼんやりとした意識の片隅には、目覚める直前まで見ていた夢の記憶が曖昧に漂っていた。けれど、もうすでに夢の全体像は思いだせない。いくつかの断片的なイメージだけはおぼろげに浮かんでくるものの、それらは鮮明にも、ひとつのまとまりになることもなかった。
目覚めたあと、妙に胸に残る夢。そんな夢を見る日は、別に珍しくはない。けれど、どうしてか、この日の僕は、その感覚がいつもよりも強く気になって、しばらくの間、意識して夢の内容を思い起こそうとした。
しかし、記憶は薄れていく一方で、結局どんな夢だったのかは思いだせなかった。僕は、胸のうちにわだかまっていた気持ちを吐き出すようにして、ひとつ大きくため息を吐き、身体を起こした。